アリゾナ州メサにあるアップル社のサファイア工場のようなプロジェクトを誘致したいと考えている州や都市は、その都市の行動をケーススタディとして活用し、そうしたプロジェクトを自らの地域に誘致するのが賢明だろう。
ブルームバーグ:
2012年、iPhoneメーカーのアップル社が新たな事業拠点の建設地としてテキサス州を選んだ際、アリゾナ州はアップル社に無視された。フェニックス郊外メサのスコット・スミス市長は、歴史を繰り返さないと決意した。
2007年の住宅バブル崩壊で大きな打撃を受けたメサは、減税措置や送電線の敷設、建築許可の迅速化に努め、さらにはアリゾナ州を説得して、アップルが検討していた空き施設130万平方フィートを外国貿易地域として指定させた。
昨年末、アップル社による工場買収を祝って市庁舎周辺に赤と緑のリンゴの入ったボウルを置いたスミス市長は、「アップル社のような企業がこの地域にやって来て投資してくれることは、特にこのような事業であれば、意義深いことです」と語った。
ブルームバーグは、アップルのメサ工場が米国が競争力を発揮できる製造業の一例だと指摘している。「フル稼働時には、この工場は現在の世界生産能力の2倍に達することになるだろう」と、ヨール・デベロップメントのアナリスト、エリック・ヴィリー氏は述べた。この工場は年間8,000万台から1億台のiPhoneに相当するサファイアを生産できるという。
サファイアガラスの製造工程には、少数ながらも十分に訓練された労働力が必要となる。この点が、アップルの新工場を、アップルのパートナーであるフォックスコン・テクノロジー・グループが運営する工場とは異なる点である。フォックスコン・テクノロジー・グループは海外で数千人の労働者を雇用し、iPhoneやiPadの組み立てを行っている。米国の工場は、複雑な設備を操作する熟練労働者を必要とするため、経済的に合理的である。
「誰もが自分の地域に産業と成長をもたらしたいと願っています。競争は非常に激しいのです」と、メサ在住のテクノロジー業界アナリスト、ジム・マクレガー氏は語る。「私たちが話しているのは、低技能労働者のことではありません。」
アップルは、海外への業務委託の多さをめぐる批判が続く中、米国における製造能力の拡大計画を発表した。同社は最近、テキサス州オースティンで製造される新型Mac Proを発表した。
アップルが9月にメサの空き工場を調査し始めたとき、最初の問い合わせは匿名の電子機器会社からだったため、州および地方当局は相手が誰なのか全く分からなかった。
市の土木部と公共事業部は、建設予定地の電力供給や水道、地元の下水道システムの能力などについて、次々と質問を浴びせられた。アップル氏の質問に対する回答は、通常わずか数日しか与えられなかった。
メサにとって有利な点の一つは、この施設がここ数年以内に建設されたため、数か月以内に稼働できる可能性があることだ。
交渉の過程では、電力源が障害となった。Appleは、この施設で100%再生可能エネルギーを使用することを望んでいた。同社はこれを実現するために、地元の電力会社であるソルトリバー・プロジェクトと交渉した。このプロジェクトのために、太陽光発電所と地熱発電所が建設されている。また、当局は工場内に新たな変電所を建設することにも合意した。
建設許可の発行には通常数か月かかるが、サファイアガラス工場プロジェクトの建設許可は30日以内、中には24時間以内に発行されたものもあった。
アリゾナ州が加えたその他の「特典」には、建物の改修と雇用促進のための1,000万ドルの助成金、そして工場周辺地域の外国貿易地域指定などが含まれていた(これにより、アップルは固定資産税を70%以上削減できた)。
アリゾナ州商務局を運営するサンドラ・ワトソン氏は、これらの優遇措置はアップルの雇用創出と結びついていると述べた。アリゾナ州はeBayやYelpといったテクノロジー企業の本拠地である一方で、住宅危機が地域の失業率に与えた影響からまだ脱却できていない。アリゾナ州の12月の失業率は7.6%で、全国平均の6.7%を下回っている。
アップルのサファイア工場建設のニュースは、市の外郭に計画されているテクノロジーパークでこの電子機器メーカーの隣りに居たいと考えている他の企業からの問い合わせを集めている。
アリゾナ州メサ市が、アップル社と協力し、空き工場を将来の製品に搭載するサファイアガラス製造工場への転換を加速させる意向を示したことは、地元行政にとって良い動きと言えるだろう。しかし、アップル社とのこの提携によって、どれだけの高給で新たな雇用がこの地域にもたらされるかは、時が経てば分かるだろう。